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小樽 藤澤心臓血管クリニック

昨年より進めておりました小樽の循環器(心臓・血管)と
下肢静脈瘤の日帰り手術を提供する専門クリニックが11月15日に開院致します。
専門クリニックとして地域の社会福祉への貢献と小樽を明るく元気にしたいというクライアントの熱い思いが
心地良い内部空間や最先端医療とホスピタリティに豊んだ環境を実現しました。
建築的にも壁構造の大スパンによるフレキシブルで明快な空間ができました。
また、外断熱やほぼ100%地中熱による冷暖房・ロードヒーティングへの利用、環境性の高い先進的なクオリティーを実現しました。
3階住宅ゾーンは道路面より大きなテラスでセットバックしクリニック側からのプライバシーと圧迫感に配慮した構成とし、テラスに開かれた気持ち良い居住空間としました。
機会がありましたら是非一度ご覧下さい。
クリニック内にコンセプトを院長と私で記しましたのでここに掲載致します。

建築のコンセプト
藤澤心臓血管クリニックは、専門のクリニックとして必要とされる高度な医療設備を備える事はもちろん、来院される方々がゆったりと心和む快適な環境づくり、またCO2削減へ貢献するエネルギー効率の高い新しい技術を融合した、北海道の中での先進的なクリニックを目指しました。
外観は1・2階のクリニックはガラス面を多くし内部の柔らかいインテリアを外に伝え、また外壁を白いタイルとコンクリート、金属板で構成し、清潔感ある入りやすい軽快なデザインとしました。3階はクリニックを訪れる際に圧迫感を与えないよう壁面をセットバックし、屋上スペースをフロストガラスによるスクリーンを持つテラスとして利用し軽快な外観と内部的な用途を両立しています。
アプローチは広々とした内部空間を感じられる位置に配し安心感を与えます。2ヶ所の待合室は大きな開口部でそれぞれの樹木のある庭に面し、吹抜で2階と繋がる自然光溢れる開放的で心和む空間としました。建物全体を通じて自然素材を使用し、柔らかな間接照明を多く採り入れることで安らぎと落ち着きを与える空間をつくっています。歩行部床の下地にはクッションシートを組み込み衝撃を和らげます。
建物の構造は鉄筋コンクリート壁構造としながら、床と壁の配置や構造計画の検討により自由な開口部を設け、梁のないロングスパンのスラブとし、開放的で広々と明るい空間と、将来の部屋用途の変更にフレキシブルに対応できる事を考慮しました。
密着通気層型の外断熱工法とトリプルガラス木製断熱サッシュの組合せにより、Q値(熱損失係数)1.3を確保しながら、冷暖房熱源を地中熱ヒートポンプによりほぼ100%まかない、計算値でEHPの1/2程度の消費エネルギーとしています。また同時に採用した地中熱方式のロードヒーティングに関しては灯油ボイラーの1/4程度のエネルギー消費となります。
このクリニックが多くの方々に親しまれ、人々が集う魅力的でホスピタリティに富んだ空間となること、同時に時代が求める省エネルギー性を高い技術で実現する事で、地域社会をしっかりと見据えて存在する夢と可能性をもった建築を目指しました。


〔エコロジーへの取り組み〕
●地中熱ヒートポンプによる冷暖房・ロードヒーティング
自然エネルギーである地中の熱を有効利用した地中熱ヒートポンプは、化石燃料を使わず、優れた省エネ性と地球環境に優しい冷暖房システムです。「地中熱」は地下50~100メートル程度の浅い部分の熱を利用するもので、地中に特殊なパイプを挿入し、その中に不凍液を循環させることにより熱交換を行い、当建物の暖房・冷房・給湯・融雪のほとんどのエネルギーをまかないます。地中熱は気象条件に影響を受けず、一年中安定した熱供給が可能です。従来の灯油ボイラーなどに比べてエネルギー消費はとても少なく約1/2~1/3、化石燃料を消費する量が大幅に削減されるため、省エネやCO2削減などに貢献します。
●RC外断熱 密着通気層工法
断熱にはRC外断熱密着通気層工法を採用しています。外断熱は躯体であるコンクリートが建物の内側にあるので、外気温に影響されず室温と同調します。冬期間一度暖まったコンクリートは暖房を止めた後、室温が下がると溜めた熱を放出するため極端な温度変化がありません。又、夏季においても外気の高温に影響されずエアコンも微量で快適に過ごせます。
又、建物の壁・窓などから逃げる熱量、及び隙間風などから失う熱量を表すQ値(熱損失係数)においては、経済産業省・国土交通省の基準値1.6W/m2k以下(北海道地区)を下回る1.3W/㎡kであり、冷暖房エネルギーを徹底的におさえる高い省エネ性能を発揮します。
また、耐久性が内断熱構造に比べて格段に高まる外断熱工法、特に壁内結露を防ぐ通気層工法の建物は100年以上もつと考えられており、建替えによる建築廃棄物も大幅に削減できます。
●アルミエレメント熱交換換気
換気設備には、北海道以上に寒さの厳しいカナダで開発された熱交換換気システムを採用しています。
新鮮な外気を室内に取り入れながら、屋外に排出されるよどんだ空気から出る熱を屋内に供給される新鮮な空気へと効率的に伝える特許アルミニウムコアが搭載されています。このアルミニウムコアは温度の低い時期でも熱交換の効率が下がらないという特徴を持っています。
排出される空気の熱を屋内に供給される新鮮な空気に最大限に伝えるという質の高い空気がもたらすすべての利点を享受しながら、1年通して冷暖房エネルギーを節約することが出来、冬の間建物の中の暖かさを最大限外にもらしません。夏の冷暖房には逆の働きをし、屋内に供給される空気から屋外に排出される空気へと熱を伝え、家の中を涼しく保ち、新鮮な空気で満たします。
●ハイドロテクトタイル
地球温暖化や酸性雨、呼吸器障害の原因となる大気汚染。その大気汚染を引き起こす有害物質であるNOxとSOxを分解し、大気を浄化するのが〈大気浄化機能〉です。光触媒作用によってハイドロテクトタイルが除去するNOxの量は、650㎡(当建物外壁で使われたタイル)でポプラの木45本分に相当します。いわば、ハイドロテクトタイルを用いたビルを建てるということは、都会に木を植えるということなのです。
また、汚れを分解する光触媒のセルフクリーニング機能により、汚れが付きにくく・付いたとしても落ちやすく・付いた汚れが雨で流されやすくなっています。太陽光というクリーンなエネルギーを利用し、清掃にかかるメンテナンスにともなう洗剤や水を大幅に削減ができる、また従来のタイルに比べ美しさが長持ちするメリットがあります。
●自然素材タイル・木・鉄・ガラス・コンクリート等の質感ある素材を多用し、時間経過をしっかりと受け止める耐久性と、歩み重ねる時と共に良い意味での深みを持ち、価値が深まる素材を使用しました。特に毎日手の触れる建具を木材で創り柔らかで本質的な環境を目指しました。

    遠藤 謙一良

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