NEWS & BLOG

函館大沼の家が竣工しました

2年がかりで設計監理してきた大沼の住宅が無事先週引渡しが行われました。
撮影で1日滞在し朝から夜までの晩夏の1日の光を楽しみ南面の大きな窓からもほとんどが高さ20m位の樹々に対面し、
上部の枝の間から光がもれ字の中に葉の風で揺らめく影が投影され、またさまざまな壁や床が光に美しく映し出され変化を楽しむ事ができました。
1階の食堂は森を思う存分楽しむアルコーブ状に壁面から突び出しソファーシートとテーブルを特注で製作しましたがガラスも3方Fixのコーナーフレームガラスです。
すっきりしたデザインとしました食卓からは、パノラマで美しい森を楽しむ事ができます。また空間に奥行が生まれ住宅がより深みのある印象的な空間となっています。
9月末に東京で建築学会の世界大会が開かれ私が所属する日本建築家協会北海道支部で2050年へ向けての文を寄せる事となりまとめた内容です。

函館大沼の家

HOKKAIDO ARCHITECTのパラダイムシフト

2050年への建築家の新たな視点
・エネルギー対応都市・建築の確立
現在北海道の住宅で進められている北方型住宅の技術を標準化し住宅以外の建築においても省エネルギー規準、中・大規模の世界規準を確立する。主なエネルギーは再生エネルギーとし、地域のインフラ環境、スマートグリッドの技術とライフスタイルの変化に柔軟に対応できるより高い創造性が建築家に求められます。2010年にはQ値1.0以下の住宅の設計が北海道の建築家によって実現しております。
・地域性の再生
グローバル化の中で地域格差が縮小された一方、地域の個性やコミュニティが現在急速に失われています。商店街や新たな街づくりを建築とともに考えられる建築家の役割は大変重要です。現状を正確に情報分析し、魅力のある創造力と人々の心をつなぐ役割が求められています。
・人口減少に伴う地域再構築
北海道人口2010年550万人が2050年319万人と実に40年で42%(231万人)の人口が北海道で減少する事が予測されています。街も再編される中で、歴史や地域文化を十分継承した豊かな街を考え計画する必要があります。建築家の役割は失われる歴史に対する提案を含め多岐に渡る文化的な深い視点が求められています。
・歴史を継承する街づくり
140年の歴史の中で、都市や街が幾度か再編され、歴史を伝える各地の歴史的建造物の多くは失われました。現在まで遺る建築も耐震性・老朽化・断熱性などの問題がありますが、量から質の時代の現代において歴史を現代に継承するのは最も大切な事の一つであり、再生・活用し豊かな地域コミュニティの創造を提案する「建築文化を建築家がリードする」ことが求められています。
・美しいランドスケープをつくる
北海道は日本やアジアから農業・漁業の重要な生産拠点としてこれから益々注目されます。風景の基本となる郊外の建築を建築家が美しいデザインをし、また、魅力的な場所の創造をすることで魅力的な地域文化が育まれ、また、観光地として美しい風景は人々の交流を活性化する事となります。
・世界有数の観光地として
アジア圏の経済力が高まる中で最北の先進地域として近年、北海道は注目を集めております。豊かな四季・風景・食材を持つ特性はアジア経済圏の中で特異な個性を持っております。グローバル化する中で観光地としての環境設備と独自の建築文化をしっかり形成する事が建築家に求められています。予想される時代の変化の中で建築家は従来以上の主体性と確かな、そしてグローバルな視点により地域密着する積極的な活動が求められると思います。産・学・官・民が協力して必要とされる姿や方向を速やかに作り上げる事が必要です。
これから予想される変化に対応する形で建築家の役割を想像してみましたが、科学と情報の益々の発展、従来の役割の枠を越えたより多くのプロフェッショナルが社会や街、建築に対して力を合わせ、チームワークでつくるという時代が来る事が予想されます。
ただ、いつの時代にも変わらない、また、守らなければならない自然や人間やあらゆる生命の尊厳や環境に対し、人間としての高い見識と創造力を持った建築家の存在は貴重であり2050年の未来にも豊かな時代を築いていく重要な役割が益々期待されると思います。北海道の建築家を取り巻く第三期のパラダイムシフトをしっかり捉え、豊かな自然と融合した高質で深みのある魅力的な建築文化と豊かなコミュニティ社会の2050年の実現を目指します。

遠藤 謙一良

カテゴリー
最近の記事
アーカイブ