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バリ島記

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先日仕事ではありませんが、バリ島へ行く機会がありました。
東南アジアのインドネシアの中でも観光に特化した島であり、経済自体が観光によって成り立っている場所です。

アジアリゾートの最高峰と言われる場所、人が最も好ましい感覚を受ける場所です。
きっとそれを包む物である建築の本質の一つもそこにあるのでしょう。

飛行機で7時間強、深夜に着いた飛行機を降りると日本では感じたことのないジットリとした湿度と30度を超える熱気があたりに立ち込めます。

熱帯雨林の気候の中で圧倒的にまず感覚として日本と違うのが植生と植物の生きる力でした。
気候は雨季と乾季しかなく、四季はありません。

人々は繁茂する植物にちょっと場所を空けてもらい、石や木など、自然素材で建物や場所を造っています。
時を置かずに建物に使用された石には苔が生え、蔦が伸びます。
住民はそれを当然と捉え、植物と共生します。
きっとこの島では2~3年も建物を放置しておくと、建物は植物の生育土壌となって、10年も経てば遺跡のように森の一部と化すのではないでしょうか。

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建物に掘られたバリの手工芸による石の加工や木材の加工、その他デザイナーによらない、建物だけに限らない圧倒的な宗教観と自然との融合による造形の数々には息を呑みます。密度の高い自然との対峙の中で、土着した造形は当然現代建築とは対比的につくられた恣意的造形ですが、むしろモダンなシンプルより嫌味がなく、空間と完全に調和し豊かです。
日本では建材は木造と言いつつもほとんどが化学物質の塊と言うことが多いです。
これは様々な経済的な要因や気候条件などもありますから土地による違いと言う理解にはなるのですが、バリではほぼ、素材以外の建材を使っていません。木・石・鉄・油・布など、それらが外部とほど一体となった風通しの良い環境の中で腐朽せず使い続けられています。
旅行の途中新しく出来たレストランに入った際には、日本にいれば見る価値のあるデザイン性の高いインテリアでさえも(樹脂などの貼りものでインテリアのほとんどが出来ている)、圧倒的に心地よいバリの自然素材に身をおいていた体には強い違和感を与えました。

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日本では季節に寄らず屋内に一定の環境を作るため人の意思により植物は簡単に駆逐されますが、バリでは植物と人工物の境界があいまいです。緯度が極点に近いほど人と自然との関係は、建築と言う観点に限っては敵対に変わって行きます。赤道に程近いバリの植物と人間の関係は、人が遺伝子の奥深くに忘れかけた好ましい自然との関係性を思い起こさせるほどでした。

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日本と言う環境に身を置く設計者である私にとっては、圧倒的な生命力に満ちた世界である気候それを体験することは、それを真似する事を知るのではなく、自分たちの住む世界を客観視する契機とするべきなのでしょう。

今回のバリは、表面上ではなく嘘のない、人が現代の生活に渇きを覚えている根源からを癒す本当のリゾートなのだという事を実感した良い機会でした。

きっと訪れた誰もが、またいつか、ゆっくりと訪れたいと心から思う場所です。

p5143143.jpg by   スタッフ 富谷洋介

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