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EAA 遠藤建築アトリエ新社屋が第15回(2021年)日本建築学会北海道支部 技術賞を受賞しました。

「森から考える建築~エゾマツを使用した新たな在来軸組工法と室内気候の計画」

のテーマでEAA新社屋が第15回(2021年)日本建築学会北海道支部技術賞を受賞しました。

 

■SDG’s・・・北海道で最も美しいエゾマツ材の使用を前提として「地産地消」をテーマに計画。エゾマツを構造材として新たな在来軸組工法に試み、木肌を含めた素材の美しさや質感、樹木と光の四季の移ろい、水盤の光の反射、降り積もる雪など、自然の持つポテンシャルを落とし込むことで、身体感覚に働きかける「街の中の森」を空間化した。エゾマツは富良野の東京大学演習林にて原木から選定を行い、製材までに3年を要した。過程で出た端材は外壁の格子材として使用。腐朽を抑制するために接点を小さく3層にレイヤー分けをした。エゾマツは植林技術が難しく、今のところ流通材として入手することが出来ない為、本計画がエゾマツの再認識と今後の普及の一助になることを願っている。

 

■構造計画・・・北海道を代表する樹種の蝦夷松を用い、火打梁・水平梁の無い在来軸組工法による柱の森の空間を朝から午後までの間、光=自然の風景を写し出す木造のHPshell形状の屋根により在来軸組工法の新しい可能性を拓き、特注の金物によりシンプルで美しい木架構を目指した。また、部材は小径の寸法とし日頃から共につくる建具・家具をはじめとする地元大工チームによる仕事を実現した。屋根は面分布する積雪荷重に対して、小径材を双曲放物(HyperbolicParaboloid曲面)に構成、等分布な屋根面を構築。2Fアトリエは、時間軸を意識した偏荷重を不静定次数の高いパラレル梁構造とし、直交する小径材の根太構造と対比させた。エゾマツ素地の美しさを表現した真壁柱と梁の偏心接合で伝統木組みのレトリックを表現。特別ではないディテールで構築し地元の大工でも製作可能な構造とし、活動の基盤となるアトリエが四季の光と木を感じる、自然と融合する新しい木質空間を実現した。

 

■室内気候計画・・・1階居室床下スラブ上に温水配管を転がし配置し、1,2階床面の複数のスリットから温度差により上昇する暖気を建物内に拡散させる計画。換気は1階倉庫をチャンバーとして外気を導入した後、床下へ送り暖め、一部の空気は2階北東・南西のハイサイドと1階トイレから強制的に排気、残りは還気として1階倉庫へ戻される。HPshellの天井は1階からの暖気を効率よく引き込んだ後、壁側での下降を促す。その結果1,2階居室表面温度を18~20℃前後になり、冬季でも快適な室内気候が形成される。本建築の断熱・気密性は札幌版次世代住宅基準のベーシックレベル相当であるが、道内には同程度の外皮性能を持つ住宅が多いため、今後の設計や住まい支援の為に有効なデータ収集が望める。

 

以上の技術的アプローチを安藤耕作氏、齋藤雅也先生と計画し、自然と融合した新しい木造在来軸組工法を、通年ゆるやかな風(空気)が流れる快適な室内気候を1階の土間床暖房のみで実現しました。

ANDO Imagineering Group 安藤耕作 氏、札幌市立大学教授 齊藤雅也 先生 両氏との創造により、感性が工学的技術により新しい世界につながったことが評価されました事、両氏と学会に感謝申し上げます。

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