昨年竣工しました、介護付有料老人ホームアウルコート真駒内。
発表会の文章の抜粋を、北海道立近代美術館での建築家展・展覧会展示パネルとともにこちらで紹介させていただきます。
敷地は札幌市南区の真駒内に位置します。南・東を道路に面する角地で、周辺は低・中層、の集合住宅が並ぶ閑静な住宅街です。本計画は、単身や夫妻の為の33室の介護付き有料老人ホームです。
プランは、東と西に住居棟を配置し、中心1階に食堂、2階に多目的室・和室、3階に大浴場のパブリックスペースを設け、中庭に面した開放的なH型のプラン構成です。1階の食堂の南側には中庭を設け、その先に温室空間を配置、書籍棚や暖炉のあるラウンジを含め、様々な用途の室が廊下で繋がる回遊型の変化のある生活環境をつくりました。
食堂からは吹抜けで2階の2本の廊下とホールでつながり、1階と2階が一体感ある空間とし、浴室にもテラスを設け、開放的な構成としました。
各個室には専用のシャワー、トイレとキッチン(オプション)を用意し、バルコニーを設置し、雨や陽射しを考慮しました。また屋根を外断熱し夏の蓄熱輻射に対応した柔らかで快適な室内環境を目指しました。
廊下の突き当たりはカウンターテーブルを設けたアルコーブ空間とし、書斎や談話コーナーの空間としました。
外観は白を基調色とし、明るくモダンな印象をつくり、道路側はとかく単調になりがちな共同住宅の外観にバルコニーの見込寸法に変化をつけ、一部のバルコニー壁にえんじ色のアクセントカラーを取り入れることでファサードにリズムと変化をつくり、道を歩く人々、そしてなによりも入居する人が楽しく感じられるデザインを目指しました。
外構は建物周辺に樹木や草花を植栽し、畑も用意しました。特に中庭にはサクラを植え、雪解けの春には花見を楽しみ、入居者が1年の時間の中で景観や育成を楽しみさまざまな行事とつながる工夫をしました。
管理的な視点を中心とした構成ではない、老いて益々悠々と生活を楽しめること。その為の工夫とゆとりのある空間を全体プランの中に盛り込みました。
「旅するように暮らしたい」この言葉のもつ旅でうける発見・喜びを日々感じ楽しめるような魅力的な生活環境の実現をソフトとハードの両面から目指しました。
(日本建築学会北海道支部発表会2007より)