昨年竣工しました、 介護老人保健施設 望 ・望洋台なついクリニック。
発表会の文章の抜粋を、北海道立近代美術館での建築家展・展覧会展示パネルとともにこちらで紹介させていただきます。
敷地は小樽市の東側、望洋台の丘に位置し、東側の遠方に石狩湾を望み西側に毛無山の山並みが広がる景観豊かな環境です。
地形は山から西側へなだらかに傾斜し、敷地内に7mの高低差があります。本施設は100人収容の介護老人保健施設と40人対応のデイサービス、内科診療所の3つの用途からなる施設です。介護老人保健施設ではユニットケアを基本とし、10人1ユニットからなる独立した療養室グループを10ユニット、パブリックスペースとしての機能訓練室や、レクリエーションスペース、ラウンジを設けました。
南北に長く、また高低差のある地形を利用して、前面道路側に毎日の出入りに対応しするため診療所とデイサービスゾーンを設け、後方と2階に介護老人保健施設を設けました。
地階には高低差を利用し客動線と分離した外部から直接入れる搬入口を設け、厨房等のスペースを配置し、エレベーター、ダムウェーターで1階2階に食事や介護材料を受け渡せる効率的なプランとしました。周辺環境との関わりとしては特に東側、北側の低地側に既存住宅がある為設計GLを低めに設定し、高さのシュミュレーションをし、周辺へ与える日影の影響を極力押えました。
4箇所に設けられた中庭は各ユニットや廊下に光をもたらすと共に、100mを超える建物のボリューム感を押さえ、周辺住居への圧迫感を減らす効果も期待しています。
介護老人保健施設部分の房状に枝分かれしたユニットの居間は全て南面し、通年明るい環境とし、パブリックスペースからは小樽の海と山並みを望み、小樽で暮らした入所者の方々に住み慣れた土地のイメージを感じられる構成としています。
全ての居住スペースには極力木質材を使い、地域の個性と縁と光があふれる、いきいきとした人間環境を目指しました。
南面する個室は全て庇を設け夏の太陽高度の高い日差しに対応し、また夏季の上からの蓄熱輻射を避ける為、屋根部分は外断熱としました。
ユニットを一つの家と考え、大きな広場(レクリエーションスペース)を持った変化のある楽しい街をイメージして計画を進めました。
(日本建築学会北海道支部発表会2007より)