9月24日、私の恩師 建築家 竹山実先生が逝去されました。 享年86歳でした。 私が大学3年生時に竹山先生にお話しを聞きたくお会いして以来 竹山先生は他大学の先生でありましたが 大学で3,4年、大学院にて2年間、そして竹山実建築綜合研究所に 入所して9年間の計13年間、師事し先生の著書を含め人生において 大変大きな影響と多くの学びをいただいた偉大な建築家でありました。 2か月待ってようやくお会いした時の言葉は今でも鮮烈に覚えています。 「君は有島武郎を知っているか。彼は大正時代に自身所有の農場を働いている人に 農地開放したのだ。君も私もそんな北海道のリベラルな土地の末裔なのだ」 という話をしてくれました。 特に大学院では建築学科にも関わらず、 一貫して人間・身体・社会・文化・自然・科学・哲学・文化人類学・芸術・環境と 建築を形成するための周辺の領域についてを横断的に学ぶ事が徹底されたことは 時代や社会が大きく変化する中で常に物事の本質を見極め、 新しい可能性を創造する為に必要な学問でした。 真の自由な創造力を最も大切にされる深い知力を秘めた建築家でした。 竹山先生が大切にされた建築史家ギーディオンの“Architecture You&Me”は 良い建築をつくる為には社会的創造力を高める事が大切。 その為のコミュニケーションが重要という社会的発信、啓蒙を 建築家が行う重要性を伝えられました。 今、まさに成熟した社会・都市にとって必要な質の高い文化が求められていることに通じます。 大きな時代の転換期を迎える今こそ、竹山先生の思考は新たな時代を切り拓く 確かな創造的な可能性を多く有し、一端を継承することで 私なりに一歩一歩課題に対して可能性をもった提案に 繋げていきたいと思っております。 大きな力に屈することなくご自身のお考えを極め貫き、 常に優しく遠くを見つめる目線で、未来を拓く若者を大切にするお人柄を偲び、哀悼の意を表します。 コロナ禍で葬儀に出席できず失礼しておりますが改めて竹山先生に ご冥福と御礼と御挨拶の弔問を果たしたいと思っております。 北海道新聞 12月11日(金)朝刊 6面 哀惜 掲載