2008年は公私共に様々な仕事がありました。 仕事では、帯広・旭川・ニセコ・小樽・札幌と広いエリアで仕事をすることができました。 住宅では宮ヶ丘スパイラルコートで周辺環境から考えた中庭を廻り3層にわたって回遊する プランを考えましたが、中庭を通して小さな空間が繋がり、生活を通して、一日あるいは1年の 時間の中で感じる時空間を設計する事が主なテーマとなりました。光や風景がやわらかく変化する 中庭を巡り、視覚をはじめ五感で感じる質に、時間が重なる事でその家のあるいはその空間に圧倒的で 独特の密度と質感が人々に身体的に感じ共通する世界。 青葉町の家でも1人の人間が光や庭の風景に心地良さを感じながらいかに充実して快適に生活できるかを 精神と空間の関係で考えました。 傾斜する大きな屋根型の天井に覆われた一つ屋根のもとで、用途として必要な室が半階ごとスキップして 繋がりつつ、障子や室内で時に開かれ時に閉ざされる空間です。 これは1人の住む人にとって季節や天候・時間によって感じられる心の変化と空間の関係が大切と考えたからです。 日中の開放的な時間からプライベートな個の空間へと変化します。 大きな屋根が様々な状況を受け止め、安心感の中に家として強いアイデンティティーと質感を 時空間として感じられる家を目指しました。 2作品に共通する事は、建築を構成する形である屋根や壁によって光や環境として最良の位置を考え、 最も大切な事は人間が空間を1日あるいは1年の時間の中で感じ蓄積される事が当たり前の事ですが、 快適であったり、自分自身の一部として家を感じる事とそれがある確かな密度と質を伴った空間になる事を考える事でした。 歯科クリニックも4件竣工しました。 いつも心掛けている事は、機能性が高く将来に渡る、メンテナンス性の良さを持ち、なによりも来院される方々に、 快適で魅力的な空間を創る事です。 クリニックとしての品性を備えた中でいかに人々に響く場所性を持った空間を創るかが、結果として大切なテーマとなりました。 また所属する日本建築家協会北海道支部幹事長として、全国大会の東北大会への参加やまとめ、札幌以外の各地区メンバーの 作品発表会の企画。また、次代を荷う若手JIA建築家の意見交換会の企画、他に日本建築学会との共同企画セミナーの開催、支部総会、定例会の運営と手塚貴晴氏のフォーラムの司会、年末には環境コンペの企画実施を実行、地域間との格差を縮め、特に若手との交流会を含め全メンバーに有意義な日本建築家協会を目指して私なりに活動しました。 私的には日本建築学会の作品選考委員として現地審査や作品選考に参加させて頂き、 作品の本質を考え評価する難しさと意義を考えた大切な機会でした。 また、小樽の坂牛邸の保存活動をスタートし、NPO小樽ワークスの活動を多くの方々とスタートし、 清掃、雪囲い、駒木先生による建物調査や会則の製作、勉強会、ミーティング、角先生による 「建築家田上義也の世界」のセミナーなど、建築文化の保存の難しさと参加する人々と共有する楽しさなど 新鮮で新しい力を感じる有意義な1年でした。 6月のサミット、年末のアメリカに端を発し、自動車等の製造業、建設業と大きな経済不安が起きています。 とりあえず消費主導型のアメリカ型の体制が難しく、一方で自然の環境を考慮し生かした建築が大切な事は十分理解できます。 私も環境セミナーや技術力をつけ、冒頭に記しました建築空間としての場所性と地域性を回復し、人々にとって全身を使った、 感じる日本人が長い年月で培った質感高い空間をつくり、環境的視点と確かな尺度を持つ事が2009年からのテーマです。 それでは良いお年をお迎え下さいませ。 (遠藤 謙一良)